布団から出られない

好きなものがとことん好き。考えたことや読書記録を書く予定。

『あなたを選んでくれるもの』を読んだ

 

 

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)

 

 

無料配布される小冊子に「売ります」広告を出した人を尋ねてインタビューするというニッチな日常系企画もツボながら、ミランダ・ジュライ×岸本佐知子とあっては、私にとっては盆と正月がいっぺんに来たような嬉しい本だ。

個性的という一言では片付けられない登場人物たち。一人ひとりのエピソードも好きだが、私が一番心惹かれるのはミランダ・ジュライの率直さだ。ドン引きしている自分、優越感を感じるいやらしい自分を隠さない。こういう表情を作ったとか、こう見えるように振舞ったとか、自分の気持ちと行動に常に自覚的だ。持ち返ったサラダを捨てるまでの重苦しい靄のような気持ち。私は自分のダメさを正直に語る人の本を読むと、自分を代弁してくれているようで妙な親近感が沸く。相手は迷惑かもしれないけれど。

「この世には無数の物語が存在」していることが、肌触りと質感と匂いで伝わってくる。時には受け止めきれないくらいの熱量で。生身で生きていることの凄まじさと逞しさ。初めて会った人とここまで渡りあえる覚悟の背後には、人への興味、つながりたいという熱意がある。自分が彼女だったら、ここまで関われるだろうか。全ての物語に関われないことのもどかしさを感じながら自分の選んだ人生を生きていくこと。考えるとざわざわするし混乱してくるけれど、自分の組成が豊かになる気もする。

ミランダ・ジュライが昨年発表したという『Somebody』というアプリもさすがと思ったけど終了してしまったようだ。解説ムービーはまだ見られる。ちょっと、頼まれてみたかった。