布団から出られない

好きなものがとことん好き。考えたことや読書記録を書く予定。

『あなたを選んでくれるもの』を読んだ

 

 

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)

 

 

無料配布される小冊子に「売ります」広告を出した人を尋ねてインタビューするというニッチな日常系企画もツボながら、ミランダ・ジュライ×岸本佐知子とあっては、私にとっては盆と正月がいっぺんに来たような嬉しい本だ。

個性的という一言では片付けられない登場人物たち。一人ひとりのエピソードも好きだが、私が一番心惹かれるのはミランダ・ジュライの率直さだ。ドン引きしている自分、優越感を感じるいやらしい自分を隠さない。こういう表情を作ったとか、こう見えるように振舞ったとか、自分の気持ちと行動に常に自覚的だ。持ち返ったサラダを捨てるまでの重苦しい靄のような気持ち。私は自分のダメさを正直に語る人の本を読むと、自分を代弁してくれているようで妙な親近感が沸く。相手は迷惑かもしれないけれど。

「この世には無数の物語が存在」していることが、肌触りと質感と匂いで伝わってくる。時には受け止めきれないくらいの熱量で。生身で生きていることの凄まじさと逞しさ。初めて会った人とここまで渡りあえる覚悟の背後には、人への興味、つながりたいという熱意がある。自分が彼女だったら、ここまで関われるだろうか。全ての物語に関われないことのもどかしさを感じながら自分の選んだ人生を生きていくこと。考えるとざわざわするし混乱してくるけれど、自分の組成が豊かになる気もする。

ミランダ・ジュライが昨年発表したという『Somebody』というアプリもさすがと思ったけど終了してしまったようだ。解説ムービーはまだ見られる。ちょっと、頼まれてみたかった。

習慣を変える条件

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日常の習慣を変えることが難しい。よっぽどの危機感や大きなきっかけがあっても急激な変化についていけず、慣性の法則が働いてしまう(三日坊主ともいう)。しかしここ数年、いくつかの習慣を変えることに成功した。鍵は日々のサブリミナル情報の蓄積と好きな人だ。私は体と心が十分納得してスタンバイ状態にならないと継続できないたちらしい。

朝ごはんに温野菜を取り入れたのも、「シリコンスチーマーって楽だよ」と誰かに聞いた情報が、昨今の健康不安と重なって機が熟したからだ。アンテナを張って少しずつ「気になる」ものを集めていくと、ししおどしのように、ある日カコーンと動く。あるいは幾つかのパーツが集まるとようやく私の「やる気スイッチ」として完成する。我ながら自分の操縦が面倒だが、こういう仕様なので仕方ない。

長らく「体力作りをするための体力」を養わねばと通勤中に検索し、できそうなものをピックアップしていた。職場では毎日ジムに通っている人が効果的なストレッチを教えてくれる。しかし動けない。私の中の「習慣変えない勢力」が踏ん張っている。最終的に毎日ラジオ体操をするに至ったのは、マキシマム ザ ホルモンの新作DVDで「バンドマン総勢111名によるラジオ体操リレー」を見たからだ。山が動いた。私は「好きな人」にあっけなく影響される。好きな人パワー、あなどりがたし。

「今年は活字を読もう」と決めて既に4冊目に突入したのも、津村記久子さんのインタビュー記事で挙げられていたお勧めの本を読んでみようと思ったからだ。好きな人の価値観なら信じられるのか、単に同じ体験をしたいのか。少なくともラジオ体操をしていると、皆の前でお手本として体操をするナヲちゃんが脳内再生されて楽しくなる。

できれば有酸素運動もしたいので、私の好きな人たちには是非とも素敵な有酸素運動を始めていただき、情報発信してほしい。他力本願だが、こういう仕様なのであしからず。

 

保温マグと来年の自分

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物を買うまでに時間がかかることがある。必需品はそうでもないが「なくてもなんとかなるけど、あれば便利」なものほど時間がかかる。それがあれば確実に生活が最適化され、足りないものが補えて物事が1つ解決するのに、二の足を踏んでしまう。それを買ったことで、バタフライ効果のように自分の生活に変化が起きて後戻りできなくなるのではという感覚が常につきまとう。目下の悩みは保温マグだ。

週に1日だけ通う職場には、事務室に保温ポットがある。日中は別室で仕事をするため事務室に頻繁に行けず、常にペットボトルを携帯している。でも冬場はホットのペットボトルは小さくて冷めてしまうし、冷たいペットボトルは体が冷える。週1日のためだけだけれども、保温機能のついた500mlくらいのマグがあればいいなと常日頃思っている。

なら好きなものを買えばいいのだが、その職場自体が非常に自宅から遠く、3時間近くかけて通っている。仕事内容は好きだし勉強になるのだが、体の負担を考えるといつかやめようと時々考える。ここで保温マグを買ってしまったら、辞めようとする決断が鈍るような、保温マグを買うことがここで来年も再来年も働き続けるという決定打になってしまうような気がしている。ちなみに保温マグは昨年亡くなった母のものが実家にあり、もったいない星人だった母が「ここにあるじゃない!」と呼んでいる気もするが、私は諸事情によりそれを使う気はない、というのも保温マグについて考えるともやっとすることのひとつだ。

こうやって考えているうちに暖かくなり、なんとなく保温マグ問題は先送りになるのかもしれない。電撃的に完璧な保温マグと出会わない限り、この案件は来年の冬に持ち越されるだろう。案外、誰かからプレゼントされるというのが一番の解決策のような気もする。果報を寝て待つ。